あいのり投資のパリミキアセット®の考え方 第2回:日本の現実 ―― なぜ日本では、運用者が「同じ船に乗っている」ことが見えにくいのか

2026年10月28日

前回は、欧米のファンドマネージャーが自分のファンドに自己資金を投じるのが常識であり、米国ではその保有額の開示まで制度化されている、というお話をしました。

今回は日本に目を向けます。結論から言えば、日本では、運用者が自分の運用するファンドをどれだけ保有しているかを投資家が確認できる仕組みが、米国のような形では整っていません。ただしそれは、日本の運用者の誠実さや意欲の問題ではなく、投資信託の「かたち」の違いに根ざした、構造的な事情によるものです。

なぜ、こうした違いが生まれるのでしょうか。

 

背景① 「組織で運用する」という構造

1つ目の理由は、日本の運用会社の成り立ちにあります。

日本の運用会社の多くは、銀行・証券・保険といった大手金融グループの一員として設立されています。そこで働くファンドマネージャーは、独立した「オーナー運用者」というより、「会社員」として運用を担う立場です。

そして日本の企業文化として、数年ごとの人事異動があります。今日は株式ファンドの運用者でも、数年後には別の役割を担っているかもしれません。組織として運用を継承していくこの仕組みには、特定の個人に依存しない継続性という長所があります。

一方で、自分が数年で離れるかもしれないファンドに自らの資金を投じる、という動機は構造的に生まれにくくなります。

欧米のように、1人の運用者が1つのファンドを何十年も人生を賭けて運用する、という前提がそもそも成り立ちにくいと言えるのです。

 

背景② 「契約型投信」という仕組み

2つ目の理由は、投資信託そのものの「かたち」の違いです。

米国の投資信託の大部分は、ファンドが1つの会社として設立される「会社型」です。ファンドごとに取締役会があり、運用者の保有額を含む情報開示は、その会社の責任として制度化されています。

これに対して日本の投資信託は、運用会社と信託銀行の契約に基づいて設定される「契約型」が基本です。1つの運用会社が数十本、大手では100本を超えるファンドを設定・運用し、1人の運用者が複数のファンドを兼任することも珍しくありません。

ファンド1本ごとに運用者の保有額を開示する米国型の仕組みと比べると、日本のこの契約型という土台の上では、根本の制度を変えない限り実現が難しいのです。

 

しかし契約型の特徴として、新しいファンドを設定しやすいという面もあります。

その結果、日本の公募投資信託は約5,800本にのぼります(2026年9月末、資産運用業協会)。新しいファンドが設定される一方で、既存のファンドも残り続けるため、本数は年々積み上がり、ファンドあたりの規模は小さくなりがちです。そして、数が積み上がっていった結果、ファンドを購入する投資家にとっても販売する証券会社などにとっても、一本一本のファンドの「顔」が見えにくくなります。

このように多くのファンドが存在する中で「品揃えの一つ」として捉えられやすい環境では、運用者自身も投資するという発想が、自然には育ちにくいのです。

 

そしてもう一つ、象徴的な違いがあります。米国ではファンドマネージャーの氏名と経歴が開示されるのに対し、日本では、特定の個人に依存しない組織運用を重んじる考え方から、運用担当者の氏名を前面に出さないファンドも少なくない、ということです。

組織運用には継続性という長所がある一方で、投資家側から見ると、「誰が、どれだけの覚悟を持って運用しているのか」という部分は、どうしても見えにくくなります。

 

背景③姿勢の問題ではなく、仕組みの違い

誤解のないように申し上げたいのですが、これは日本のファンドマネージャー個人の誠実さの問題ではありません。日本にも、優れた志を持つ運用者は数多くいます。しかし、自社ファンドの売買に厳しい社内ルールを設けている会社も多く、「買いたくても事実上買いにくい」という事情もあります。

また、米国のような保有額の開示制度がないため、仮に自己資金を投じていても、それが投資家に伝わる回路がありません。

つまり「同じ船に乗っているか」が見えにくいのは、日本の制度設計の違いがもたらした結果なのです。

 

大きく変わった日本の運用業界と残る課題

ここで強調しておきたいのは、日本の運用業界がこの5〜6年で劇的に変化した、という事実です。購入時手数料のかからないノーロードが主流となり、信託報酬は極めて低い水準に抑えられました。情報開示が徹底され、親会社との関係を含むガバナンス構造も見直されています。

また、金融庁が掲げる「顧客本位の業務運営に関する原則」のもと、共通KPIの公表など、少し前には考えられなかった取り組みが当たり前になりました。コストと透明性の面で、日本の投資家を取り巻く環境は、世界的に見ても高い水準に達しつつあると言ってよいでしょう。

それでもなお、「運用者が自分のファンドにいくら投じているか」を投資家が確認できる仕組みは、契約型という制度の性質上、まだ存在しません。

器は大きく良くなった今、「同じ船に乗る」という一番肝心な部分をどう示すかは、制度ではなく、運用会社一社一社の姿勢に委ねられているのです。

 

投資家は運用者の「覚悟」をどう見るか

この構造は、投資家の皆様にとって何を意味するでしょうか。

自分がお金を預けようとしているファンドの運用者は、そのファンドに自分のお金を入れているのか。下落局面で、お客様と同じリスクを負う立場にいるのか。それを確かめる手段が制度としては用意されていないからこそ、運用会社が自らそれを語り、形で示しているかどうかが問われます。

「このファンドのマネージャーは、自分のお金を入れているのだろうか?」――この問いを持つことこそ、ファンド選びの新しい物差しになると私たちは考えています。

 

次回、最終回

では、運用者とお客様が本当に同じ船に乗るには、どうすればよいのか。私たちの答えが「あいのり投資」です。

次回はいよいよ最終回。

あいのり投資とは何か、そしてなぜそれが「ファミリーオフィス的運用の象徴」なのかをお話しし、この考え方を日本の常識にしたいという私たちの想いをお伝えします。

どうぞお楽しみに。

 

参考資料
・資産運用業協会、公募投資信託の資産増減状況(2026年9月末)、資産運用業協会ホームページ、https://www.toushin.or.jp/statistics/statistics/data/、2026年10月20日
渡邉格史
執筆者
渡邉格史
株式会社パリミキアセットマネジメント
取締役
国内銀行に16年間在籍し(その内半分は米国駐在)、その後、外資系のコンサルティングファームに16年間在籍。銀行員として養った金融知識とコンサルタントとして鍛えられた課題解決力で、少しでもパリミキアセットマネジメントのお客様のお役に立ちたいと考えております。

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