2月22日、NPO法人ニューロクリアティブ研究会主催のセミナーが開催されました。
脳科学者・茂木健一郎さんとフリースクール講師の田森佳秀さんをお招きし、私も含め三人で「AI時代の生き方、育て方」をテーマに語り合いました。お二人はともに、AIの理論的基礎を築きノーベル賞候補にも名が挙がった甘利俊一先生の愛弟子です。
AIの発展というと欧米主導のイメージがありますが、日本もその中心的役割を担ってきました。茂木さんは2017年に英語で出版した「IKIGAI」が世界58カ国で広まり、特にドイツで二年連続ベストセラーを記録した国際的な作家でもあります。一方の田森さんは、子どもたちの自発性を大切にしたユニークな授業でフリースクールの現場に立ち続けています。
AIの進化がもたらす変化
AIの進化は、今や指数関数的な加速の時代に入っています。AIはインターネット上の膨大な情報を学習しているだけでなく、毎日世界中の何千万、何億もの人々と高度な意見交換を積み重ねています。人間が一生をかけて経験する知的対話の量を、AIはわずか数秒で、言語の壁を超えて達成してしまいます。
さらに近未来には「フィジカルAI」が登場し、身体を持ったAIが現実世界に飛び出してきます。アトムやドラえもんの世界が現実になる日は、もうそこまで来ています。

AIにできないことは?
こうした時代の中で茂木さんが強調したのは、「決断する力」と「自発性」の重要性でした。
AIが様々なシナリオをシミュレートして戦略の可動域を広げる一方で、最終的に決断するのは人間です。自ら表現したい・やりたいという内なる動機は、人間固有のものであり続けます。
私からは「感じる力」についての話をしました。
私は、人差し指の指先の神経を切る怪我をしたため、指先の感覚がありません。そのほんのわずかな面積がいかに膨大な情報を感知していたかを痛感しています。人間の身体は全身にわたる繊細なセンサーを備えており、その感性にロボット技術が追いつくのは容易ではありません。
この力を育むには、自然の中でのびのびと過ごすことが大切です。自然は情報量が多すぎて脳だけでは判断できず、体全体で感じるしかない。その点で日本は恵まれています。明確な四季、暖流と寒流がぶつかる豊かな海そして山、多様な動植物の共存——移ろいゆく繊細な表情を持つ日本の自然の中で育つことは、五感を通じて世界の複雑さと調和を学ぶことにほかなりません。
生きる意味を問う力
もう一つ欠かせないのが「意味を問う力」です。
哲学、古典文学、宗教書といった書物は、直接的な利益には役立たないかもしれませんが、人類が長い歴史の中で「どう生きるか」を問い続けてきた記録です。幸福とは何か、苦しみをどう受け止めるか、なぜ他者と共に生きるのか——そうした問いに触れることで、人は内面に揺るぎない軸を持つようになります。それは外から与えられる目的ではなく、内側から湧き上がるもの、まさに茂木さんが世界に発信してきた「IKIGAI」の発見そのものです。
AIがどれほど賢くなろうとも、感じ、問い、決断する人間であることの価値は、これからの時代にこそ光を放つはずです。
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