本当の人口問題

2024年03月11日

最近、日経平均が4万円を超え、大谷翔平選手が婚約を発表するなど、華やかな話題が増えています。大谷選手の婚約によって日本でも結婚ブームが巻き起これば良いのですが(大谷ロスで沈んでいる皆さんも早く現実に戻りましょう)、2023年の日本の婚姻数は前年比5.9%減の48万9281組となり、90年ぶりに50万組を下回ったようです。さらに、合計特殊出生率(1人の女性が生涯に産む子どもの推定人数)も1.26人(2022年)と減少を続け、その結果、2023年の国内出生数(速報値)は過去最少の75万8631人(前年比5.1%減)となり、8年連続で過去最少を更新してしまったようです。

一方で、「団塊の世代」が後期高齢者に続々と仲間入りする年齢に達し、日本の少子高齢化はいよいよ加速しています。将来的な人口予想によれば、2020年の1億2,615万人から2070年には8,700万人に減少し、65歳以上の人口割合は2020年の28.6%から上昇し、2070年には38.7%になると推定されています。これらの、少子高齢化と人口減少の未来予測が我々の不安を増大させています。ただし、少子高齢化にはプラス面もあり、それについては私の著書「ジャパン・イズ・バック」の第一章で詳細に述べていますので、興味があれば是非ご一読いただければと思います(アマゾンのKindle Unlimitedにご登録の方は無料でご覧になれます)。

ここからが本題で、「本当の人口問題」について考えてみましょう。世界の人口は、特に開発途上国を中心に2050年には86.43億人に達する見通しで、この増加に伴って必要な食料は58.17億トンとなり、現在の1.7倍以上になる見込みです。これに対応するためには、23.43億トンの追加生産が必要です。国際通貨基金(IMF)の「食料飲料価格指数」によると、1992年から2022年までの30年間で食料の総合価格指数は2.5倍以上に上昇しており、21世紀に入って高騰した食料価格が元に戻ることは期待できません。

食料だけでなく、深刻な問題となっているのが水不足です。地下水の枯渇が世界中で広がり、2030年から急増し、2050年には世界の7割の地域で地下水の枯渇が予想されています(注1)。例えば、フランスのダノン社が所有する「ボルヴィック」の水源地が枯渇しつつあるというニュースが注目されています。ヨーロッパでも有名なミネラルウォーターであり、水質の良さでも評判のこの水が姿を消すことは驚きです。米国の世界資源研究所(WRI)によると、世界の人口の4分の1が住む17ヵ国では、ウォーターストレスが高く、水の需要が供給よりも多い状況が続いており、これが紛争を引き起こすこともあります。

地球全体の視点から考えると、人口が増え続けることが望ましいのか、それともそうでないのかについて深く考察する必要があります。日本の人口が化石燃料の大量消費や農業の近代化、外国からの大量の食糧輸入によって江戸時代の末期の3400万人から、今日の1億2500万人まで、約3倍に増大してきました。ただ、それぞれの国の事情によって食糧の輸入が永続的であるとは限りません。また、水不足の国の水を使用した食物を輸入し(いわゆるバーチャルウォーター問題)、その食品を大量に廃棄している現状からも、国際社会においては責任を果たす必要があります。

最近ではAIが相場の中心になっていますが(これは今後も続くでしょう)、将来的には世界の投資家も水と食料の問題の重要性に気づくでしょう。AIの世界から超現実的な水や食料への価値の転換は、長期投資家が注視しておくべき重要なテーマだと思います。

注1、出典:De Graaf, I.E.M., Gleeson, T., van Beek, L.P.H., Sutanudjaja, E.H., and Bierkens, M.F.P. (2019) Environmental Flow Limits to Global Groundwater Pumping. (in press Nature).

多根幹雄
執筆者
多根幹雄
株式会社パリミキアセットマネジメント
代表取締役社長 運用統括責任者
スイス、ジュネーブに1999年から9年間駐在し、グループ企業の資金運用を担当してきました。その間、多くのブライベートバンクやファミリーオフィスからの情報により、世界18カ国100を超えるファンドマネージャーを訪問。実際投資を行う中で、良いファンドを見極める選択眼を磨くことが出来ました。また当時築いたスイスでのネットワークが現在の運用に大いに役立っています。また、大手のメガネ専門店チェーンの役員として実際の企業の盛衰も経験し、どんな時に組織が良くなり、また悪くなるかを身をもって体験しました。そこから、どんな企業やファンドにも旬や寿命があるというのが持論です。その為、常に新しいファンドを発掘し、旬のファンドに入れ替えを行うことで、長期で高いパフォーマンスを目指しています。

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