コロナが導く新しい世界

2020年03月10日

それにしても凄まじい新型コロナウイルス旋風ですね。当初は世界の報道も感染源である中国、そして客船が話題になった日本が中心でしたが、その後各国に感染者が出現するに至り、急激に緊張度が上がっていったようです。株価も、2月最後の一週間でNYダウが12%、日経が10%と、金融危機の目安となる15%に接近する勢いでしたし、安全資産であるはずの金も2月中旬からの高騰の後、月末に暴落となりました。一説によると、他の金融資産の損失を埋めるため、高騰していた金を売って益出しをしたので暴落したそうです。

現実の生活の中でもマスクだけでなく、トイレットペーパーまで無くなり、3月には学校が突然休校になるなどパニック的な状況が続いています。良い点は、首都圏の朝晩の電車の混雑が随分と緩和されたことくらいでしょうか。それでも、日本の対応は諸外国と比べると対応が甘いと批判の対象になっています。確かに新型コロナウイルスの危険性がまだ十分解明されていなかった初期の段階では、もっと徹底した封鎖処置をとるべきでしたね。実際、感染の拡大の為に各国から入国を制限されてしまっているイタリア、イラン、韓国、日本等は、中国全土からの人の流入を制限する決断が出来なかった国々です。

幸いなことに、新型コロナウイルスは感染力は強そうですが、2月14日のWHOの発表によると、感染者のうち軽症は80%、重症14%、致死率は2%ということで、SARSや鳥インフルエンザほど「致命的ではない」ということのようです。しかも、中国を除く致死率は0.2%とも言われており、一般的なインフルエンザの0.1%と同じ程度ですから、手洗い、マスクは当然としても、まずは健康な状態であることが一番の感染予防といえるでしょう。

中国の一地域に生息していた野生動物から感染したウィルスが短期間にこれほどの騒動を引き起こしたのは、ある意味、効率やスピードなど、経済的な要因を最優先してきたグローバリゼーションや、中国一極集中への弊害と言えるでしょう。また、危険度が低い割には、マスコミ、政府それに企業が過剰な反応を引き起こしたのも、金融資本主義が推し進めてきた過度のコンプライアンス重視の姿勢(誤解のないように言っておくと、本当に必要なコンプライアンスは評価しますが、現状では何でもとにかく責任回避しておこうという過度なものが目立ちます)が影響しているようにも思います。そういう目で見ると、今回の新型肺炎も、最近特に熱を帯びている環境問題や、貧富の差の拡大と民族主義の台頭、それに起因する移民排斥運動など、全てが過去30年に及ぶ経済最優先で、金融が世界を支配するグローバリゼーションの負の遺産への反動といえ、今回の騒動はその流れを決定づける契機になっていくでしょう。

それでは次はどのような時代になるのでしょう。というより、どのような時代を目指していけばいいのでしょう。今までは、世界全体で共通の価値観を持つことを、ややもすれば押し付けることが多かったように思います。「グローバルスタンダード」という言葉も随分と流行しました。しかしこれからは、それぞれの国や、地域や、コミュニティ、それに個人の個性を尊重し、それぞれの違いを認めながら、全体の調和を創り上げることが必要でしょう。この点で期待しているのが多神教的な価値観です。以前もお話ししたかもしれませんが、やがてインドが台頭してくると、日本も含め、多神教的な価値観の経済圏が次第に影響力を強めてくると思っています。多神教の良いところは、人間自らも自然の一部と考え、全体的な調和を重んじること。さらに、異なる価値観を認め、全て受け入れるということだと思います。

特に私たち日本人は、過去のグローバリゼーションの時代(1984年の冷戦終結からの約30年)を上手く活かすことが出来ずに失われた時代を送り、すっかり世界における存在感、影響力を喪失してしまいました。つまりまったく過去の時代の価値観に適応できなかった民族だと言えます。そんな永い眠りから目覚めつつある日本人だからこそ、時代の価値観が大きくパラダイムシフトする時代において、何か提言できるのではないか。日本人が自然や人々と調和しながら生きて来た価値観の中に、これからの世界を導くヒントがあるように思えてなりません。

コロナのお陰でいろいろなイベントや会合がキャンセルになり、気が付けば意外と時間の余裕が生まれつつある今こそ、そんなこれからの時代のあるべき姿をじっくりとイメージしてみるのもいいかもしれませんね。

多根幹雄
執筆者
多根幹雄
株式会社パリミキホールディングス
代表取締役会長
スイス、ジュネーブに1999年から9年間駐在し、グループ企業の資金運用を担当してきました。その間、多くのブライベートバンクやファミリーオフィスからの情報により、世界18カ国100を超えるファンドマネージャーを訪問。実際投資を行う中で、良いファンドを見極める選択眼を磨くことが出来ました。また当時築いたスイスでのネットワークが現在の運用に大いに役立っています。また、大手のメガネ専門店チェーンの役員として実際の企業の盛衰も経験し、どんな時に組織が良くなり、また悪くなるかを身をもって体験しました。そこから、どんな企業やファンドにも旬や寿命があるというのが持論です。その為、常に新しいファンドを発掘し、旬のファンドに入れ替えを行うことで、長期で高いパフォーマンスを目指しています。

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