『令和』は良い時代に!?

2019年04月09日

令和_和光.jpg4月1日にいよいよ新元号が「令和」に決定しました。4月いっぱいはまだ平成とは言うものの、桜が咲き、新年度がスタートしたこともあって、すっかり新しい時代の雰囲気になって来ましたね。

「平成」が始まった頃は、「昭和」という民族自決寸前まで追い込まれた敗戦と、その後の世界的な経済大国への驚異的な発展という、波乱に満ちた64年もの時代が終焉した事、また昭和天皇のご逝去直後ということもあり、新しい時代が始まったというよりは、「昭和」という時代が終わったという感じが強かったと思います。しかし、この度は新たな時代の始まりとして歓迎されており、その点でも生前での継承はプラスだったかもしれません。元号の存在についても、一部否定的な意見もあるものの、ややもすると短期思考に陥りがちな日本人にとって、数十年年単位で物事を考える、貴重な機会を提供してくれているという点では貢献してくれていると思います。

実は「平成」が始まった1989年は、世界的にとても重要な年でもありました。この年の12月に、第二次大戦後続いていた米ソの「冷戦」が終結、それまで資本主義と社会主義で分断されていた地球上の11億人と30億人の間の壁が取り払われた歴史的な年でした。当時は冷戦終結を、世界中の人々が歓喜とともに受け入れたものです。これで平和な時代が訪れると。

しかしその実態は、貧しい中国のような東側の人々と、彼らの30から40倍もの賃金である我々西側の人間との競争の始まりであり、世界的な大価格競争時代の幕開けでもありました。その結果、当然のことながら、西側の先進国は競争に敗れる企業が増大、失業者が激増し、賃金も上がらず、非正規雇用者の増大という現象が起こります。特に当時まで西側諸国の「世界の工場」を誇っていた我が国は、生産拠点の中国シフトの影響をモロに受け、その影響は特に21世紀に入って、ただでさえ株や土地のバブルが弾け、財務体質の極度の悪化で弱っていた日本経済を直撃、そのダメージは絶大なものとなりました。一方で世界的な価格競争は、物価下落という恩恵ももたらしましたが、そのことがデフレをさらに長引かせるという点では、マイナス面の方が大きかったかもしれません。

日本は平成の間に、一人あたりのGDPも2位から25位に下落、さらに阪神淡路、東日本大震災をはじめ多くの天災に見舞われた時代でもあり、平成ファンには申し訳ないですが、日本にとって大変厳しい時代だったと思います。

さて、その平成不況をもたらした原因の1つである中国の低賃金ですが、まだ一部のお金持ちを除いて先進国には及ばないものの、その他の発展途上国と比較すると、湾岸地区を中心に他を大きく引き離す水準にまで上昇しています。今後米中貿易摩擦の交渉がどう展開しようが、実態としてはかつてのような中国の競争力は失われつつあり、それと共に中国への投資も大幅に減少して来ているのです。

むしろ、今後は豊かになった中国人が求めるのが安いメード・イン・チャイナではなく、質の高いメード・イン・ジャパンなどであるということを考えると、今や中国は日本にとっては、タフな競争相手という存在から、良いお客様へと変貌しつつあります。

また、昨今の人手不足は、まずは非正規雇用の賃金を少しずつ押し上げつつあり、また、来年施行される同一労働同一賃金は、その流れを加速させる事になるでしょうし、非正規から正規への移行も促進させることになるでしょう。また企業も圧倒的な人手不足に直面し、それを補う為、どんどん積極的な設備投資をすることとなるでしょう。そしてその事が、生産性の向上やをもたらし、さらに賃金アップへ、そして消費の増加につながるとういう好循環が続くことが期待されます。そうすれば、長引いていたデフレマインドも、ようやく払拭されることになるでしょう。

このように考えると「令和」という新しい時代を迎えた日本ですが、結構期待できそうです。世界的にまだまだ評価の低い日本企業ですが、その中から飛躍する企業がどんどん出て来そうです。世界的に難しい投資環境が続きそうですが、日本が救世主になるかもしれませんね。

多根幹雄
執筆者
多根幹雄
株式会社パリミキホールディングス
代表取締役会長
スイス、ジュネーブに1999年から9年間駐在し、グループ企業の資金運用を担当してきました。その間、多くのブライベートバンクやファミリーオフィスからの情報により、世界18カ国100を超えるファンドマネージャーを訪問。実際投資を行う中で、良いファンドを見極める選択眼を磨くことが出来ました。また当時築いたスイスでのネットワークが現在の運用に大いに役立っています。また、大手のメガネ専門店チェーンの役員として実際の企業の盛衰も経験し、どんな時に組織が良くなり、また悪くなるかを身をもって体験しました。そこから、どんな企業やファンドにも旬や寿命があるというのが持論です。その為、常に新しいファンドを発掘し、旬のファンドに入れ替えを行うことで、長期で高いパフォーマンスを目指しています。

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