ブレグジット前のイギリスを訪ねて

2019年07月09日

20190630_01.png2016年6月23日にEU残留派圧勝の予想を裏切り、僅差でブレグジットが国民投票で選択されました。当時のショックの大きさは、世界の株式市場の大暴落として現れました。それから約3年、イギリス政府と議会の混乱ぶりは世界中の人々の知ることとなり、思慮深い大人の国のイメージはすっかり色あせてしまいました。そんなブレグジットもいよいよ10月末に迫り、現在ではEUと交渉決裂のままでのブレグジット(ハードブレグジット)も現実味を帯びて来ました。そんな現在のイギリスはどうなっているのか、投資機会はあるのかどうかという事で訪問してみました。

パリの北駅を出発して、わずか2時間半でユーロスターはロンドン市内に到着しました。この距離感は列車ならではですね。まるで東京大阪間を移動する感じで、まさに距離も時間もほぼ同じです。どちらかと言うとロンドンが東京で、パリが大阪と言った感じでしょうか。エスカレーターに乗る際に左右どちらに寄るかという違いがある点もそっくりなのには驚きます。パリでは渋滞が慢性化し、車の合間の狭い歩道を臭い排気ガスを吸いながら歩かなくてはならず、毎週末に繰り返された黄色いベストのデモの影響もあり、何かと暗い影の残る印象でしたが、ロンドンではそれが一変します。

20190630_02.pngロンドン名物の赤い二階建てバスとクラッシックな黒いタクシーがロンドンの街並みにマッチし、それ以外の車は市内への乗り入れが規制され、渋滞とは無縁の道路、それに広々とした歩道や歩行者天国など、大都市の中心とは思えないほど快適です。今回は、ロンドンには珍しく快晴で、青空がさらに鮮やかに見えました。ただ一番驚いたのは、皆さんのくつろいだ雰囲気ですかね。連日の様に報道される政治の混乱とは全く無縁の様でした。

実際ブレグジットに関しては、賛成派は兎も角、反対派も3年も続いた議論と混乱に疲れ果て、もう早く決着をつけたいというムードが漂っています。おそらく根底には大英帝国時代の繁栄の歴史が妙な自信をもたらしているのかもしれません。「心配なのはアイルランドの国境問題だけで、後はなんとかなる」というのが今の大勢の様な気がしました。

実際の経済面ではどうでしょうか。もっとも顕著なのはポンドの下落です。ユーロに対してブレグジットの騒動以来約20%下落しています。このためアルコール類など一部高級食品の物価が上昇しているようですが、食品価格はドイツのディスカウンターの参入もあり、あまり上昇していないとのこと。またプレミアムと呼ばれる高級な不動産市場は為替を含めるとかなりの下落となり、当初はアジア系の資金が入ってきたものの、現在は動きがないようです。同じ不動産でも一般の住宅価格は、EUからの建設労働者の流入の減少で、慢性的な住宅不足に拍車がかかり、けっこう底堅い様です。意外なのが南仏の高級リゾートの不動産の下落です。ポンドの下落で取得できる年金が目減りしたため、余生を南仏でと思っていた定年後のイギリス人が南仏からイギリスへ戻っているのが原因だとか。

またホンダの工場閉鎖で話題になった製造業ですが、その地方経済に与える影響は大きいものの、もともとイギリスの強みは世界的な金融と大学に代表される教育分野で、これが今後どうなるかがポイントのようです。既にハードブレグジットに備え、各金融機関もフランクフルト、パリ、ルクセンブルク等に拠点をつくり対応している様ですが、ロンドンでの生活を好む人材が圧倒的に多く、人材の移転は進んでおらず、どこまで実際に機能移転できるかは難しそうです。教育分野ではEUからの学生は大きく減少する一方、それ以外の国からはポンドの下落の影響もあり増加しているようです。

20190630_03.png今後の可能性として現実味を帯びてきているEUとの交渉決裂によるハードブレグジットですが、実際はイギリス側を中心に、かなりのショック緩和策を用意している事も、皆の「なんとかなる」感を助長している様です。

今回の短い滞在でわかった事として、仮に最悪のハードブレグジットとなったとしてもあまり大きな影響は出ない、と意外なほど楽観的なイギリスの様子でした。それがかえって不気味な気もしました。果たしてこのブレグジットがどの様な条件になり、どの様な事態を引き起こすのか?結局その本当の影響が現れるのは、今から何年も経った時点かもしれません。

今回の訪欧の報告会を東京(7月19日)と大阪(7月20日)で開催します。訪問した4カ国の状況や各地のファンドの解説も行いますので是非ご参加下さいね。

多根幹雄
執筆者
多根幹雄
株式会社パリミキホールディングス
代表取締役会長
スイス、ジュネーブに1999年から9年間駐在し、グループ企業の資金運用を担当してきました。その間、多くのブライベートバンクやファミリーオフィスからの情報により、世界18カ国100を超えるファンドマネージャーを訪問。実際投資を行う中で、良いファンドを見極める選択眼を磨くことが出来ました。また当時築いたスイスでのネットワークが現在の運用に大いに役立っています。また、大手のメガネ専門店チェーンの役員として実際の企業の盛衰も経験し、どんな時に組織が良くなり、また悪くなるかを身をもって体験しました。そこから、どんな企業やファンドにも旬や寿命があるというのが持論です。その為、常に新しいファンドを発掘し、旬のファンドに入れ替えを行うことで、長期で高いパフォーマンスを目指しています。

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