確かな未来に長期投資

2020年05月14日

syasin.png世界各国で新型コロナ封じのロックダウン緩和の動きがみられる中、日本では緊急事態宣言が延長戦に突入することになりました。もっとも日本の場合はロックダウンでなく、もともと自粛(といってもかなり強制的な)ですし、県や企業によっては元に戻そうという動きがみられるので良い傾向かと思います。

私が確認した範囲では、発生時ならいざしらず、ある程度感染が広がってしまった状況で、完全にウイルスを封鎖することは不可能で、最終的には集団免疫がある程度(60%以上)の人で獲得されないと、本当の収束にはならないようです。あとは医療崩壊や高齢者等の感染に最大限配慮しつつ、経済を出来る限り元に戻して、集団免疫を確保してより早く終息を迎えるかということだと思います。しかし、世界的規模で見ると元の状態に戻れる完全なアフター・コロナの訪れは遠く、ウイズ・コロナの時期が続きそうですね。そんな状況ですから今後世界がどうなるかは、まだなかなか予測が難しいのですが、こういう時は不確定で変化の激しい情報より、はっきりしている長期の変化に注目したいと思っています。

まずは世界の中央銀行が空前の資産購入に乗り出しています。その額は既に5兆ドル(約530兆円)相当と言われ、アメリカの国家予算、日本のGDPを超える額です。ちなみに、その半分はアメリカのFRBによるものだそうです。つまり大量の資金が金融市場に供給されているということで、今後もこの資金は増大していくでしょう。このことは当面はプラスに作用しますが、将来の増税に結び付くリスクもあります。

次に明らかなこととして、世界の人々の動きを一気にストップしてしまったわけですから、実体経済の方は大きく収縮しています。需要だけでなく、供給サイドもダウンしていますので、当面全体ではデフレ傾向が続くでしょうが、モノや国によっては価格が暴騰するものが出てくるかもしれません。もっと恐ろしいのは、長期の経済停滞による倒産や失業者の増加です。自国通貨で借金が出来るアメリカや日本などの国はむしろ少数派で、ほとんどの国はドル建てなどの通貨でしか国債を発行できません。しかも、信用が無いので国債を発行する場合は高利率となり、かなりの金利負担となってしまいます。

その為、実体経済を疲弊から守るための充分な財政出動が困難ということになり、新興国を中心に多大な倒産、失業が生まれてしまう可能性が高くなってしまうということです。経済は大小の歯車が絡み合って成立しているもので、遠くの新興国の小さな企業が倒産したり、貧しい人が失業したりしても、数が大きくなると世界規模で甚大な影響が出てきてしまう可能性があります。もっとも、今回の中国への過度の依存リスクが改めてクローズアップしたこともあり、投資先が中国から新興国へ流れる可能性がありますので、そのような国々にはプラスの作用もありそうです。

三つめが、新型コロナ前後で大きな変化がおこるということです。かつて、中世にヨーロッパで流行したペストは、当時絶大だった教会の信用を失墜させ、さらに彼らの経済基盤だった農奴制を崩壊させることで、中世を終わらせたとも言われています。今回の新型コロナも、先月のレポートでもお伝えした通り、働き方や、住環境、都市の在り方等々を大きく変化させ、産業革命以来続いていた地方から都市への人口流入の流れが逆流し始めるかもしれません。どんな変化にしろ、これだけの大きな影響を与えた後ですから、我々の価値観を含め、多大な変化があるのは間違いないでしょう。ここで大事なポイントは、大きな変化のある時は、かならず急成長してくる企業が現れるということです。

このように確かな未来を考察しながら、我々長期投資家として真剣に考えなければいけないのは、大量に金融市場に供給されたマネーがどこへ行くのかということでしょう。キーになるのは「供給が限られるもの」になりそうです。この「供給が限られるもの」は何か?金(きん)なのか、あるいはビットコインなどの仮想通貨なのか?高級ワインなのか?新しい時代の一等地なのか? でも長期投資家として一番期待できるのは、やはり「新しい時代に適応できる、かつ参入障壁の高い企業」ということでしょうか。そんなこれからの成長企業を見つけ出す、必殺技を持ったオタクな新たなファンドマネージャーを世界中からしっかり見つけ出し、この苦境を将来感謝できるようにしたいですね。

多根幹雄
執筆者
多根幹雄
株式会社パリミキホールディングス
代表取締役会長
スイス、ジュネーブに1999年から9年間駐在し、グループ企業の資金運用を担当してきました。その間、多くのブライベートバンクやファミリーオフィスからの情報により、世界18カ国100を超えるファンドマネージャーを訪問。実際投資を行う中で、良いファンドを見極める選択眼を磨くことが出来ました。また当時築いたスイスでのネットワークが現在の運用に大いに役立っています。また、大手のメガネ専門店チェーンの役員として実際の企業の盛衰も経験し、どんな時に組織が良くなり、また悪くなるかを身をもって体験しました。そこから、どんな企業やファンドにも旬や寿命があるというのが持論です。その為、常に新しいファンドを発掘し、旬のファンドに入れ替えを行うことで、長期で高いパフォーマンスを目指しています。

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