1990年代の米国駐在中に出会ったスター・トレックとAIの未来

2026年02月10日

私が『スター・トレック』を視聴し始めたのは、1990年代初頭、ニューヨークに駐在する20代後半の頃です。

当時のマンハッタンは治安が悪く、夜間の移動はイエローキャブが推奨されるほどでした。現地のレンタルビデオ店の独特な手続きに馴染めなかったこともあり、私はマンハッタンの社宅でテレビを観る時間が多くなりました。

 

日本の番組が限られている環境で、好んで視聴したのがNFLや米国のドラマシリーズです。

字幕がなく英語が聞き取れない番組も多い中、偶然出会ったのが『スター・トレック』です。「宇宙、それは最後のフロンティア……」という有名なナレーションで始まるこの作品は、比較的聞き取りやすい英語であり、私の英語力向上にもつながりました。

この作品に惹かれたのは、単なるSFエンターテインメントの枠を超え、未知の事象に対してクルーたちが仮説を立て、検証し、意思決定を下すプロセスが丁寧に描かれていたからです。

帰国後も視聴を続けるうちに、本作が制作段階から科学者が関与し、未来技術を「予言」ではなく「条件付きの可能性」として描く、極めて科学的な作品であることを知りました。前提条件と因果関係の一貫性を重視するその姿勢は、現実のビジネスや意思決定にも通じるものです。

こうした思考様式は、現代のAI技術を評価する際の基礎にもなっています。

例えば、元OpenAI研究者Daniel Kokotajlo氏を中心に、AI技術・政策・安全性の専門家などが共同で米中開発競争の果てにAIが暴走する可能性を描いた未来予測「AI2027レポート」のようなシナリオも、特定の未来を断定するものではありません。

計算能力やデータ量、社会制度といった前提条件に基づいた「思考実験」であり、前提が変われば結論も大きく変わります。

 

不確実な未来において重要なのは、的中させることより、条件の変化に応じて評価を見直すことです。

AIは万能ではありません。技術的制約や人間の運用能力によって、その価値は大きく左右されます。期待だけで語るよりも、満たされている条件を一つずつ検証していくこと。それが、かつて『スター・トレック』のエンタープライズ号のクルーたちが示してくれた、未来と向き合うための誠実な作法なのだと考えています。

執筆者:シニアストラテジスト 西山 昇

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