「日本買いはホンモノか」

2023年06月09日

 日経平均がバブル崩壊以降の高値を更新し話題になっています。そもそも、1989年の高値を、30年以上も経って更新していないのが異常な気もしますが、久々の明るいニュースであることには間違いありませんね。もともときっかけになったのがアメリカの著名投資家ウォーレン・バフェットが、二度目の来日で商社株の追加購入を発表したあたりでしょうか。また、高値更新の理由として、日銀の植田新総裁が金融緩和の継続を決めたこと、東証がPBR一倍以下の企業に対し強力に改善を求めていること、中国の先行き不安から、代替の投資先として選ばれていること、また、ドル建てでみた場合はまだ2020年の高値を大きく下回っており、割安感から買われていること、先行の下落を予想して先物を売っていた多くの投資家が急激に買い戻しているなどなど、様々な意見があります。
ちなみに、PBRが一倍以下ということは、企業の解散価値である純資産の価値を下回っていることであり、普通、未公開企業の評価でも純資産を基準に行われていることを考えると、流動性が高く、いつでも現金化できる公開株で、しかもトヨタをはじめとする世界的な企業がそのような評価というのは異常な状況とも言えるでしょう。実際、企業サイドへも様々なところからこの対策への提案が増えていますので、今回は企業も本腰を入れると期待しています。
さて、この日本買いは一過性のものなのでしょうか、それともこれからの長期トレンドとなるのでしょうか?そもそも、日本株式が弱かった背景には、日本の未来に対するネガティブなイメージがあったと思います。少子高齢化、財政難、老後不安、ITの遅れ、円安、いつまでたっても上達しない英語力。その上、地震・災害大国でもあります。
2022年に日本財団が行った18歳前後の若者を対象とした意識調査でも、アメリカ、イギリス、中国、インド、韓国、日本の6カ国の17〜19歳の男女1000人の回答を見ると、「自分の国の将来が良くなる」と答えた日本人は、わずか13.9パーセントで最下位。最高は中国の 95.7パーセントでした。10年後の自国の経済競争力が強くなるかどうかを聞いた質問でも、日本は最下位の10.9パーセント。逆に弱くなると答えた日本人は55.5パーセントで、堂々の一位です。30年間デフレが続き、所得が増えないうちに世界から取り残され、貧しくなっていく日本の姿が若者の脳裏に刻まれているのでしょう。
しかし、私はこのネガティブな情報の嵐に疑問を抱いています。金融の世界でもそうですが、「コンセンサスは間違う」のです。みんなが揃って「今後の状況はこうなる」と思えば思うほど、その通りにはならないものなのです。実際、日本がバブル絶頂の時を思い出してください。当時は今と真逆で、日本の未来に対して、一点の雲もない快晴に見え、各言う私も「これからは日本の時代だ」と舞い上がっていました。その後の悲惨な現実は皆さんも良くご存じの通りです。
多くの日本人や世界中の人が「日本はダメだ」と言えば言うほど、私は日本の将来に確信を強めています。少なくともこの先20年
から30年の間、日本にとって大いなるプラスの時代がやってくるでしょう。具体的に日本が良くなる根拠については、ここにとても書ききれないので、新著として秋までに発売予定です。楽しみにしていてください。日本が元気になれば、日本企業も元気になり、日本株も買われていくことでしょう。もちろん一旦は調整局面があるかもしれませんが、その時こそしっかり長期で仕込むチャンスです。ただし、優劣の差が出来るのがこれからの時代です。良い企業を選別できる優れたファンドマネージャーに、しっかりあいのりしていきたいと思います。

多根幹雄
執筆者
多根幹雄
株式会社パリミキホールディングス
代表取締役会長
スイス、ジュネーブに1999年から9年間駐在し、グループ企業の資金運用を担当してきました。その間、多くのブライベートバンクやファミリーオフィスからの情報により、世界18カ国100を超えるファンドマネージャーを訪問。実際投資を行う中で、良いファンドを見極める選択眼を磨くことが出来ました。また当時築いたスイスでのネットワークが現在の運用に大いに役立っています。また、大手のメガネ専門店チェーンの役員として実際の企業の盛衰も経験し、どんな時に組織が良くなり、また悪くなるかを身をもって体験しました。そこから、どんな企業やファンドにも旬や寿命があるというのが持論です。その為、常に新しいファンドを発掘し、旬のファンドに入れ替えを行うことで、長期で高いパフォーマンスを目指しています。

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