★「インド、もう一つの顔」

2023年05月12日

最近、中国を抜いて人口世界一の国となったインド。ポスト中国の最右翼として、今後の成長に大きな期待がかかっています。

このインドが親日国だということを、日本人はあまり知らないかもしれません。記憶に新しいところでは、安倍元首相が凶弾に倒れた後、インドとブラジルでは喪に服すことを決定。モディ首相と安倍元首相との個人的な関係はあったかもしれませんが、それだけではこのような国家的な対応にはならないでしょう。本国の日本でさえ喪に服さないどころか、国葬にも反対意見が集中していたくらいです。そもそも、外国の元元首が亡くなって、果たして日本人が喪に伏すことがあるでしょうか。インドは今回だけでなく、昭和天皇が崩御した際にも喪に服してくれましたし、インド連邦議会は毎年8月、原爆犠牲者のための黙祷を行うなど、日本人として、まずは感謝し、忘れてはいけないことのように思います。

両国の間には古くから、さまざまな交流の歴史があるのですが、近代の重要な出来事として、日本がインドの独立を支援したことがあげられます。

インドがイギリスからの独立運動をしていた1914〜15年ごろ、独立運動家の一人であるビハリ・ボースが日本に亡命。大アジア主義者で孫文の亡命を助けるなどの活動で知られる頭山満の支援の下、実際に彼を匿ったのは、新宿中村屋の創始者である相馬愛蔵、良夫婦でした。当時、パンや和菓子販売の他、レストランも経営し、店には多くの芸術家や文人、演劇人が出入りし、「中村屋サロン」とも言われていました。

とはいえ、相馬夫妻にとって、政治犯であるボースを守るのは、とてつもない困難を伴いました。当時、日本は日英同盟を締結中で、本来、イギリス側につくのが当然の立場なのに、インド独立を目指す革命家を支援したのです。ボースはその後、相馬夫妻の長女・俊子と結婚し、一男一女をもうけ、1923年に日本国籍を取得。1945年に亡くなります。そして、その2年後の1947年に、インドは悲願の独立を果たすのです。

また日本軍はスバス・チャンドラ・ボース率いるインド国民軍と連携してインド独立を旗印にイギリス軍と戦っています(ちなみに、このチャンドラと先のビハリには血縁関係はありません)。両軍の連携には国家的な思惑もあったかもしれませんが、若い日本兵がインド独立の為に戦い、本当に多くの尊い命を落としました。近年インドでは独立の為戦ったボースの評価が高まるとともに、日本の貢献も再評価されつつあります。

1945年に日本が無条件降伏をしたあと、1946年〜47年に東京で極東国際軍事裁判が行われます。この時、国連から派遣された11名の判事のうち、インドのラダ・ビノード・パールだけが、東条英機元首相らA級戦犯の有罪判決に反対し、無罪を主張します。「戦後に出来た事後法で裁くのはおかしい」という真っ当な理由でしたが、一人だけ反対意見を出すことはなかなかできることではありません。

当時、敗戦国として希望を失い、何も主張できない四面楚歌の状況でしたが、多くの日本人に勇気を与えてくれる行為だったと思います。

世界の経済成長をこれまでけん引してきた中国の減速がささやかれる中、俄然注目されているインドですが、最大の注目点は、IT人材の豊富さと、若年人口の多さ、それに人件費の安さでしょう。英語圏であることも強みですね。

これからインドでは毎年約1200万人もの若者が労働市場に供給されること、そして2022年時点での 一人当たりGDPも2,379ドルと、中国の12,813ドルと比べるとまだまだかなり安く魅力たっぷり。一方、「仕事が無くなる」とまで恐れられている昨今の急激なAIの進化ですが、AIの得意技の一つがプログラミングというということで、ITを得意とするインド人にとっては脅威になるかもしれません。いずれにしても長期投資家として目が離せない国であることは変わらないでしょう。親日国としてもインドのこれからを応援していきたいですね。

多根幹雄
執筆者
多根幹雄
株式会社パリミキアセットマネジメント
代表取締役社長 運用統括責任者
スイス、ジュネーブに1999年から9年間駐在し、グループ企業の資金運用を担当してきました。その間、多くのブライベートバンクやファミリーオフィスからの情報により、世界18カ国100を超えるファンドマネージャーを訪問。実際投資を行う中で、良いファンドを見極める選択眼を磨くことが出来ました。また当時築いたスイスでのネットワークが現在の運用に大いに役立っています。また、大手のメガネ専門店チェーンの役員として実際の企業の盛衰も経験し、どんな時に組織が良くなり、また悪くなるかを身をもって体験しました。そこから、どんな企業やファンドにも旬や寿命があるというのが持論です。その為、常に新しいファンドを発掘し、旬のファンドに入れ替えを行うことで、長期で高いパフォーマンスを目指しています。

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