「ウクライナ戦争の不都合な真実」

2023年02月09日

 

春の訪れを感じるものの、寒い日にウクライナのニュースを見ると、心が凍る思いがします。空襲に怯え、エネルギーや食糧不足にあえぐウクライナの人々はもちろんのこと、ロシア兵の方も、家族と離れ、長期の遠征に出て、しかも理不尽な戦争を強要されているわけですからかわいそうなものです。そもそもどうしてこんな悲劇がおこってしまったのでしょうか。またいつまで続くのでしょうか。原因がわかれば、解決方法や、終わりも予測しやすくなるというもの。ということで、今回の戦争の背景を考えてみました。

もともと2021年の暮れの段階では、ロシアは威嚇だけで、ウクライナには進軍しないというのが大方の予想でした。しかし、あの時点で、バイデン政権はロシアとの交渉にすら応じず、結果としてロシアは進軍を余儀なくされます。この背景については、様々な情報や憶測が飛び交っていますし、理由は一つでは無いかもしれませんが、歴史をさかのぼると、ヒントになりそうな事例が見つかりました。それは2003年のイラク戦争です。

当時アメリカ政府は、イラクのフセイン大統領が大量破壊兵器を持っており、フセインは「ならず者」なので何をしでかすかわからないというイメージを造成、国際世論を形成していきます。その後、各国が協調してイラクを攻撃し、遂にフセインを殺害、イラクをアメリカの統治下におくことに成功しました。しかし、戦後、大量破壊兵器は発見されず、アメリカ政府のでっち上げだったことが判明します。その時も、石油利権が狙いだったとか、様々な開戦理由が語られましたが、アメリカがでっち上げまでして、つまり自らの信用を落としてまでフセインを抹殺したかった理由は何でしょうか。それは「基軸通貨ドルの防衛」だったと思います。

このことを語るのには、さらに1971年のニクソン・ショック(ドル・ショック)まで遡ります。この時のニクソン大統領は、米ドル紙幣と金との兌換一時停止を宣言します。それまでドルは、唯一の金兌換の通貨であり、それ故にドルが基軸通貨としてIMF(国際通貨基金)を支えてきたのがブレトン・ウッズ体制であったのですが、その体制がこの時を契機に終了し、当時世界に大きな衝撃を与えました。その後、兌換紙幣で無くなったドルをいかに基軸通貨として維持するかが、アメリカにとって最大の課題となります。特に世界最大の債務国となっている現状では、基軸通貨でなくなることは、アメリカという国家の存亡にかかわる問題です。彼らはこれをエネルギーの決済はドルに限るということを世界に強要することで維持しようとしました。その為に7つの海に米軍を駐留させ、力づくでこれを維持させようとして来たのです。哀れフセインは、このアメリカのタブーに逆らい、自国の石油に「ユーロ」での支払いを了承していたのです。

さて、その後フセインを遥かに上回る規模で大胆にこれを行っている人間が現れました。それがウラジーミル・プーチンです。ヨーロッパとの間にパイプラインを引き、ユーロでの支払いを受け入れていました。さらには、ウクライナ進軍後にルーブルでの支払いを要求し    ました。しかし、アメリカにとってヨーロッパ諸国はNATOの同盟軍でもあり、表向き攻撃したり批判することはできません。しかも、EUの中心国ドイツには絶大な影響力を持っていたメルケルが君臨しており、彼女はプーチンとの絆が強く、なかなか手を出せない状況が長く続いていました。

そのメルケルが2021年12月に首相を16年もの任期を経て退任、前年の8月に安倍首相が辞任、またその年の1月にトランプも退任しており、日米欧のトップからプーチンと親しい人間がいなくなった狭間をついて今回の事態が発生しています。そのような状況下では、武力行使好きなプーチンを挑発するには、ウクライナのNATO加盟を匂わすとか、ウクライナ内での過激派をつかいロシア系住民に危害を負わせるとか、そんなに難しいことではなかったでしょう。さらに加えるならば、退任後もしっかり存在感を保持していた安倍元首相は、2022年7月に殺害されています。

このシナリオが正しいとすれば、アメリカの最終目的は何でしょう。ひとつはEUとロシアの関係を徹底的に悪化させ、ロシアからのエネルギー購入を半永久的に止めさせるか、出来れば、プーチンを失脚させ、ロシア国内のエネルギーをアメリカ資本の傘下に収めさせるということでしょうか。最近話題になったドイツ製戦車レオパルト2も、EUの盟主である「ドイツ」をロシアとの関係悪化に引きずり込む狙いがあったのだと思います。

一見、混とんとした世界情勢のように見えますが、このようなモノサシを基準に見ることで、より鮮明に物事の本質が見えてくるような気がしますがいかがでしょう。

いずれにしても、1日も早くウクライナやロシアの人々が平和な日常を送れる日が来ることを祈りたいと思います。

多根幹雄
執筆者
多根幹雄
株式会社パリミキホールディングス
代表取締役会長
スイス、ジュネーブに1999年から9年間駐在し、グループ企業の資金運用を担当してきました。その間、多くのブライベートバンクやファミリーオフィスからの情報により、世界18カ国100を超えるファンドマネージャーを訪問。実際投資を行う中で、良いファンドを見極める選択眼を磨くことが出来ました。また当時築いたスイスでのネットワークが現在の運用に大いに役立っています。また、大手のメガネ専門店チェーンの役員として実際の企業の盛衰も経験し、どんな時に組織が良くなり、また悪くなるかを身をもって体験しました。そこから、どんな企業やファンドにも旬や寿命があるというのが持論です。その為、常に新しいファンドを発掘し、旬のファンドに入れ替えを行うことで、長期で高いパフォーマンスを目指しています。

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