★「新しい『暮らす』を考える」

2022年11月10日

6月の月次レポートでも少し触れさせてもらった、私が理事長を務める「奥出雲多根自然博物館」が、今年で35周年を迎えました。この機会にあらためて博物館が出来た1987年という年を振り返ってみると、まさに日本がバブルの頂点に向かって邁進していた時期でした。都会では次々と新しいゴージャスな建物や施設がつくられ、人々もバブルの熱狂に煽られて、やたらと活気がありました。アメリカが衰退し、次は日本の時代が来るような錯覚さえ生まれた時期です。そんな中にあって、島根県や、さらに奥まったところにある仁多郡奥出雲町(当時は仁多町)は、そんな熱狂とは遥かに隔たれたまさに「未開の地」でした。今だから正直に言いますが、「何も無い、つまらないところ」というのが当時の印象です。ですから、奥出雲に行くのがとても億劫で、「早く帰りたい」といつも思っていたものでした。

それから35年。今はすっかり奥出雲への印象は変わりました。「何も無い」と思っていた地域でしたが、今は「大事なものが全てある」ということがわかりました。「自然」「食料」「水」「エネルギー」「絆」、ついでに加えるなら「温泉」もあります。しかも、すべてにおいて「豊かな…」という形容詞付きです。一方、東京に戻って電車から都会の風景をあらためて見てみると、「自然」も、「食料」も、「水」も、「エネルギー」もなく、そして「絆」も、希薄になっています。便利だけれど、本当に生きていくために大切なものは何もなかったということに気づき愕然とします。

我々は、バブル崩壊、デフレ不況、3.11、新型コロナ等々を通じて、ようやく何が大事かを、本質に近いところから見つめることが出来るようになったということでしょうか。特に新型コロナは、日本特有の現象ではなく世界規模での騒ぎとなったせいか、我々の価値観に与える影響は絶大だったと思います。毎朝満員電車に長時間乗り、定時に会社に着くことが、大した意味がなかったことに改めて気づかせてくれたことは、大きな不幸をもたらした災いではありましたが、ひとつの恩恵でしょう。

先月末、島根県の丸山達也知事や奥出雲町の糸原保町長とじっくりお話しする機会がありました。人口減少に苦しむ県や町にとって、移住者の確保は最重要課題ですが、そこで提案させていただいたのが「二地域住居」と「一時定住」のススメです。確かに田舎の魅力を再認識する時代になったものの、都会の生活をいきなり全部切り捨てて地方に移住するのは一大事です。そう簡単に決断できるものではありません。

しかし、地方でテレワークをしながら、月に一度か二度都心に出ていくのは悪くないですし、一生の間でも、お子さんが小さい間や、アトピーや登校拒否などで苦しんでいるお子様をお持ちの家庭は、人生のある時期、自然の豊かな環境で過ごすのも悪くないと思います。実際、奥出雲町でも、首都圏と奥出雲町の二地域住居で活躍する、元気な女性の皆さんともお会いしました。彼女たちの何人かは奥出雲に生まれたものの、海外に憧れそこで生活し、そして改めて奥出雲のすばらしさに気づいて戻ってきたUターン組でした。転職に対するマイナスのイメージも今やすっかりなくなり、居住地も、仕事も、固定でなく状況に合わせて、その時々に合わせて一番良い暮らし方を選べる時代がやってきた気がします。

私自身も、都心での仕事と、週末の伊豆での観光農業事業と、場所も環境も仕事内容も違う二拠点に軸足を持つことで、より豊かな人生を送れているような気がします。このような「暮らす」の新しい変化は、様々なビジネスにおいても新しい事業を生み出すことになるかもしれません。ぜひ皆様も、そんな目で企業研究されると同時に、ご自身も検討されてはいかがでしょうか。そんな時、島根県や奥出雲町もお忘れなく。

絶賛おススメです。

多根幹雄
執筆者
多根幹雄
株式会社パリミキアセットマネジメント
代表取締役社長 運用統括責任者
スイス、ジュネーブに1999年から9年間駐在し、グループ企業の資金運用を担当してきました。その間、多くのブライベートバンクやファミリーオフィスからの情報により、世界18カ国100を超えるファンドマネージャーを訪問。実際投資を行う中で、良いファンドを見極める選択眼を磨くことが出来ました。また当時築いたスイスでのネットワークが現在の運用に大いに役立っています。また、大手のメガネ専門店チェーンの役員として実際の企業の盛衰も経験し、どんな時に組織が良くなり、また悪くなるかを身をもって体験しました。そこから、どんな企業やファンドにも旬や寿命があるというのが持論です。その為、常に新しいファンドを発掘し、旬のファンドに入れ替えを行うことで、長期で高いパフォーマンスを目指しています。

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