未来は良くなる、悪くなる?

2021年09月09日

菅総理の総裁選不出馬発言の後、絶好調の日本株ですが、この勢いで成長軌道に乗ることができるでしょうか。オリンピックやパラリンピックのメダルラッシュで少しは盛り上がったものの、デルタ株の感染の急拡大、ついでに天候不順も手伝ってすっかり沈滞ムードが広がっていた時期だけに、ちょっと期待したくなりますね。もっとも、「誰が総理になっても一緒だよ」という声も聞こえて来そうですが…。

考えてみれば、かつてのバブル崩壊以降、日本は本当に長期にわたって、グズついた天気がずっと続いてきたような気がします。実際、平成元年には一人当たりGDPが世界第2位だったのが、平成30年には26位に陥落したわけですから、かなりの長期低迷ですね。

平成30年間で日本経済がどんどん悪くなった理由は何だったのでしょうか。急速な高齢化は大きな要因だとは思いますが、経済成長に追い風となる生産労働人口が増加する「人口ボーナス期」が1995年までは続いていたわけですから、これが本命とは思えません。今から思えば、重要な原因は二つあったと思います。

最初の一つが、米ソの冷戦終結で、アメリカのターゲットが、それまでのソ連から日本にシフトしたことが考えられます。当時、経済的に勢いのあった日本は、アメリカにとって自分たちの経済的地位を脅かす最大のライバルでありましたから、蹴落とす必要があったのですね。

もう一つの理由が、日本がデフレ下にありながら、インフレ下で大成功したサッチャー、レーガンに代表される新自由主義政策をとってしまったこと。これは特に橋本政権が1997年に消費税を増税し、さらに公共事業予算をカットしてからデフレ傾向が顕著になりました。本来、デフレは、需要より供給が上回った状態ですから、正しい処方箋としては需要を増やす政策をすべきで、本当は減税と財政出動すべきだったのに逆の処方をしてしまったのです。

ここからは憶測ですが、財政均衡を建前に、増税を繰り返して経済を悪化させて来たのは財務省だけではなく、そのバックに日本イジメのアメリカの存在もあったのではないかと思っています。さらに、日本のデフレが長期化することで日本の超低金利も長期化し、世界の金利のアンカー役を果たすことで、最大の借金国アメリカにとっては支払い金利が安く維持出来てとても都合が良かったのでしょう。

もし、平成日本の長期停滞の理由が、このアメリカによる日本イジメと政府による緊縮財政の継続の二つだとするならば、これからの令和の時代ではどうなっていくでしょうか。

まず、最初の日本イジメですが、大きな変化が起こっています。きっかけは、何度かこのレポートでご紹介したように、2015年のAIIB(アジアインフラ投資銀行)事件です。AIIBは中国主導で発足しましたが、アメリカの加盟見送り要請にもかかわらず、イギリスを筆頭にほとんどのアメリカの同盟国と思われていた多くの国々が加盟してしまいました。これを脅威に感じたアメリカ政府は、この時期からターゲットを中国に変換、その後米中冷戦が徐々に本格化していくことになります。ちなみに日本は、最後までAIIBの加入を見送ったため、その後の日米関係の改善のきっかけとなりました。

もう一つの不振の原因である緊縮財政ですが、日本政府の借金が膨大であることを理由に、なかなか改善できない状況が続いてきました。そんな中で期待されるのが、今回の菅総理の辞任表明と総裁選挙です。9月9日時点でまだ候補は出そろっていないものの、それぞれ、必ずしも本流でなく、しがらみが少ないところで思い切った政策が期待できそうです。特にコロナ禍でガタガタになった経済の立て直し、そして11月には衆議院選挙が控えている新政権ですから、誰がなっても大なり小なりそれなりの財政支出は不可避でしょう。

問題は、これをきっかけに財政健全化の呪縛から解放されるかどうかですね。ある程度経済が軌道に乗るまで、例えば2パーセント成長を達成するまで財政規律は度外しするといった、思い切った政策転換が必要でしょう。そういう意味でコロナで疲弊した経済を立て直すという、皆が納得しやすい今がチャンスだと思いますが果たしてどうでしょうか。さらに、米中冷戦に臨むアメリカとしても、日本が頼もしい介添人になってほしいわけですから、日本を緊縮財政から積極財政に転換させることで、日本の再生を実現させたいと望んでいるのではと期待しています。

つまり、平成日本の不振の2つの原因が取り除かれる可能性が出てきたわけで、ちょっとは明るい未来の展望が出来そうですね。企業経営も、トップはその企業の可能性について誰よりも確信している人がなるべきというのが私の持論ですが、次期総理もそんな日本の未来に確信を持ったリーダーであって欲しいと思います。

多根幹雄
執筆者
多根幹雄
株式会社パリミキホールディングス
代表取締役会長
スイス、ジュネーブに1999年から9年間駐在し、グループ企業の資金運用を担当してきました。その間、多くのブライベートバンクやファミリーオフィスからの情報により、世界18カ国100を超えるファンドマネージャーを訪問。実際投資を行う中で、良いファンドを見極める選択眼を磨くことが出来ました。また当時築いたスイスでのネットワークが現在の運用に大いに役立っています。また、大手のメガネ専門店チェーンの役員として実際の企業の盛衰も経験し、どんな時に組織が良くなり、また悪くなるかを身をもって体験しました。そこから、どんな企業やファンドにも旬や寿命があるというのが持論です。その為、常に新しいファンドを発掘し、旬のファンドに入れ替えを行うことで、長期で高いパフォーマンスを目指しています。

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