日本人の美徳が生んだ、見えないブレーキ
日本では今も、「お金の話はどこか下品」「儲け話は慎みたい」という空気が根強く残っています。
子どもの前でお金の話をしない、利益を強調しない、豊かさを語ることに照れがある。
こうした感覚は、日本人の奥深い美徳から生まれたものです。謙虚さ、分かち合い、強欲を戒める心。そのどれもが、日本社会の品格を形づくってきました。
しかしこの「美徳」が、無意識のうちに資産形成への強いブレーキとして働いてきた面も否定できません。その結果、多くの人が「働いて稼ぐこと」には真剣でも、「お金をどう育て、どう守るか」については、十分に学ぶ機会を持てないまま大人になってきました。
タルムードのお金に対する姿勢
一方、タルムードはまったく逆の姿勢を取ります。お金の話を避けることはなく、むしろ徹底的に議論します。どうすれば公正か、どうすれば騙さずに済むか、どうすれば社会を豊かにできるかなど。
タルムードにおいてお金は、決して汚いものではありません。
ただし、「使い方を誤れば危険な力を持つもの」として、極めて厳しい倫理をもとに扱われています。
ここで、日本的価値観とタルムード的価値観は、実は同じ方向を向いていることが見えてきます。どちらも、「強欲を戒めよ」「独り占めするな」「人の役に立て」というメッセージを共有しているのです。
違いがあるとすれば、日本はマナーや礼儀などの“感覚的に制御する”文化であり、タルムードは“理屈と制度で制御する”文化だという点でしょう。
お金を恐れず、支配されない――成熟した資産との向き合い方
日本人的タルムード資産形成とは、「お金について語る後ろめたさから解放する」ことでもあります。家族を守るために、次世代を育てるために、社会を少しでも良くするために、お金の話をする。そこに、恥じる理由は本来ありません。
日本人が大切にしてきた清らかさと、タルムードが築き上げた金融倫理。この二つが重なったとき、「お金は汚いもの」でも「絶対の正義」でもない、「未来への責任を伴う力」としての希望ある姿が見えてきませんか。
それは、恐れるものではなく、正しく扱うべき“道具”なのです。
お金から目を背けない。
しかし、お金の奴隷にもならない。
これこそが、日本人の美徳とタルムードからの教えが導く、成熟した資産との向き合い方なのだと思います。
【次回予告】
・第5回:「富の最終目的」――次世代と社会へのバトン、そしてファミリーオフィスという思想
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