人生初のオリンピック観戦。それも、東京ではなくまさかのパリでした。突然の商談が舞い込み、「ビンテージになれるかもパリツアー」以来6年ぶりのパリ訪問。しかも、チケットも手に入れることができました(一時高騰したチケットも直前になると、安くなったようです)。
観戦できたのは4種目でした。柔道男子100キロ級と女子63キロ級、陸上女子5000m、そしてバドミントン女子ダブルス。柔道と陸上では、残念ながらメダルには手が届きませんでした。しかし、最後のバドミントンで日本勢が銅メダルを獲得。しかも、世間を賑わせたシダマツペアの圧勝でした。金銀を独占したのは中国ペアでしたが、中国人の観客も含め圧倒的な人気を博したのは日本人選手。スポーツの世界でも、日本女性の魅力は健在なのだと、妙に誇らしく感じました。
もう一つ驚いたのは、会場の雰囲気です。NHKの放送で見るような厳粛な空気とは程遠いものでした。むしろ、プロレスやボクシングのタイトルマッチのようです。大音量のDJや音楽が会場を揺らし、まるでエンターテインメントショーでした。21世紀のオリンピックは、こんなにも変わったのかと驚かされました。
フランス人の「革新」好きは、今回のオリンピックでも存分に発揮されていました。まず目を引いたのは、ご存じ史上初の屋外開会式です。セーヌ川を舞台に繰り広げられた光景は、まさに圧巻でしたね。ただ、パリ市内全体を巻き込むとなると、警備の問題や周辺住民への影響など、課題は山積みだったはずです。それでも実現にこぎつけたフランス人の執念には脱帽でした。リスクを取った甲斐あって、より多くの市民に開かれた開会式になったようです。高額なチケットを持たない人々も、パリの街角から式の一端を垣間見ることができたそうです。パリミキ・パリ店のスタッフも、チラリと覗けたとのことでした。
フランスらしさを感じたのは、実力主義の人選です。開会式では、レディ・ガガやセリーヌ・ディオンといった非フランス人アーティストが主役級で起用されました。ネットで見た「愛の賛歌」の熱唱は、今でも鳥肌が立ちます。良いものは良いと認め、既成概念にとらわれず取り入れる。そんなフランスの懐の深さと、本物を見抜く目利き力に、改めて感心させられました。
また、今大会の特徴として、既存の建物の活用が挙げられます。ヴェルサイユ宮殿やグラン・パレなど、本来は競技とは無縁の場所が会場に。また、仮設施設の多用も目立ちました。最初に訪れた柔道会場は、まさにその典型でした。公園の中に建てられた仮設施設で、中には公園の騎馬像がそのまま。トイレは建物の外に仮設で設置され、まるでサーカスのテントのようでした。さらに愛想の良いボランティアたちのおかげで、手作りのお祭り感十分でした。
フランスのピエール・ド・クーベルタン男爵が提唱し、1896年にスタートした近代オリンピック。近年いろいろな批判にさらされているオリンピックですが、リスクをとって革新的な手法で乗り切ろうとするあり方は、企業経営においても参考になるかもしれません。企業も永続性を求められますが、長寿企業は守りだけでなく、革新の連続といった攻めも不可欠だということを学ばせてくれた旅でした。