貯めるだけでは守れない時代
「とにかく貯金をしなさい。」
多くの日本人は、子どもの頃からそう教えられて育ってきました。
貯蓄は美徳。投資や借金は避けるべきもの。危ないことには手を出さず、コツコツと貯金することで資産を積み上げてきました。
日本人のこの「貯蓄は美徳」という考えは、極めて誠実で、忍耐強い姿勢の表れです。浪費せず、謙虚に、コツコツと備える。この姿勢があったからこそ、私たちは大きな社会不安の中でも、秩序を保って生きてくることができました。
しかし、日本のこの貯蓄文化には「動かさないこと(貯めたままにしておくこと)=安全」という前提が根強くあります。
問題は、現代は、動かさないこと自体がリスクになる時代に変わりつつあります。
インフレによって物価があがり、お金の価値は目減りし、金利も動き始めています。そのため、これまでの「現金が一番安全」、「貯金していれば大丈夫」という常識は、少しずつ前提を失ってきています。
そうした環境の中で、貯蓄だけに依存する資産形成は、知らぬ間にバランスを欠いた、不安定な状態になってしまいます。貯めているはずなのに、豊かさの実感は増えない――そんな違和感を覚えている方も多いのではないでしょうか。
タルムードが教える、偏らない資産の持ち方
この点で、前回のブログでご紹介した「タルムード」のお金や財産に対する考え方は、非常に示唆に富んでいます。
タルムードには有名な教えがあります。
「人は自分の財産の1/3を土地に、1/3を商いに、1/3を手元資金に残すべきである」
この教えは現代に生きる私たちにも当てはめて考えることができます。ひとつに偏れば、必ずどこかで大きなリスクを抱えやすくなります。だからこそ、あらかじめ“揺れること”を前提に、分けて持つ。タルムードのこの思想は、何千年も前から一貫しています。
ここで重要なのは、タルムードが分散を「儲けのため」ではなく、「人生を守るための設計」として捉えている点です。
将来を予測することは誰にもできない。だからこそ、一点に賭けない。これがタルムード的リスク分散の本質です。
貯めることと分けること――日本人だからできる資産形成
では、日本人はタルムードの分散思想をそのまま取り入れればよいのでしょうか。
ここでの答えは「そのまま当てはめること」ではありません。
むしろ、日本人の強みである堅実さと、タルムードの分散思想を重ね合わせることに、本当の意味があります。日本人に合ったタルムード流の資産形成とは、「投機に走らず、少額でもコツコツと、しかし一つに固執しない」姿勢です。
まず生活防衛資金としての貯蓄を大切にする。そのうえで、企業や経済全体に関わる投資信託などを通じて、少しずつ社会とつながる形で資産を分散させていく。値動きに一喜一憂するのではなく、「長く守る」ために分けて持つ。これは、欲望のための投資ではなく、安心のための分散です。
貯めることと、分けること。この二つは、対立するものではありません。
貯蓄は“現在の安心”を守り、分散は“未来の安心”を守る。その両方がそろって、はじめて資産形成は、本当の意味で「暮らしの土台」になります。
タルムードは私たちに、「予想できない世界を、予想しないまま備えよ」と教えてきました。
日本人の堅実さと、その思想が重なったとき、私たちはようやく、“安心して続けられる資産形成資産形成”にたどり着けるのかもしれません。
前回(第1回:富とは何か――タルムードに学ぶ資産形成の原点と、日本的価値観との融合)はこちら↓
https://pmam.co.jp/blog/post_3539/
第3回:「労働依存」から「仕組み作り」へ――日本人の勤勉さを、未来を守る力に変える↓
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