働き方改革から“働きがい改革”へ

2025年11月12日

働く意味を問い直すとき

「働いて、働いて、、、働いてまいります」――自民党総裁に就任した高市早苗さんのあいさつは、多くの人の心に残りました。
長時間労働を是正しようとする時代に逆行するようにも聞こえ、批判の声もありましたが、その根底には「国や人のために力を尽くしたい」という覚悟が感じられます。

高市さんの言葉は、いま一度「働くとは何か」を問い直すきっかけになったように思います。

 

「働き方改革」が進められてから数年が経ちます。

テレワーク、副業、フレックスタイム制など多様な働き方が認められ、働く環境は以前よりも柔軟になりました。しかし一方で、働く意味や誇りを見失ってしまった人も少なくありません。「効率的に」「無理せず」という流れの中で、働くことの本来の価値――誰かの役に立ち、社会とつながる喜び――が薄れているようにも思われます。

いま必要なのは、「働き方」よりも「働きがい」を問い直すことではないでしょうか。

 

西洋と日本――異なる“労働観”

そもそも西洋では、旧約聖書に登場するアダムとイブの物語に象徴されるように、労働は「罰」として与えられたものでした。「顔に汗してパンを得る」という言葉にあるように、働くことは苦しみの象徴でもあったのです。

そのため欧米の働き方改革は、“Work–Life Balance”や“Life First”という「労働からの自由」を求める思想を土台にしています。

 

一方で、日本語の「はたらく」は「傍(はた)を楽(らく)にする」という言葉に由来すると言われます。

自分のためではなく、身近な人のために力を尽くすこと。つまり日本では、働くことは罰ではなく奉仕であり、他者を支える尊い営みとして受け継がれてきました。

高市さんの「働いて、働いて…」という言葉をこの文脈でとらえ直せば、単なる根性論ではなく、「誰かのために尽くす」という日本的な労働観を体現した言葉と言えるでしょう。

 

誰かのために働くということ

こうした「尽くす働き方」を象徴する出来事として、今年のワールドシリーズでのMLBロサンゼルス・ドジャースの山本由伸投手の姿を思い出します。

山本投手は中0日(なかゼロにち)の連投で登板し、チームの優勝を決定づける見事な投球を披露しました。身体的にも限界に近い中での登板は、「自分のため」ではなく「チームのために」という強い使命感に支えられていたと報じられています。

その献身的な姿は、多くの人に「働くことの尊さ」を思い出させたのではないでしょうか。

 

もちろん、誰もが山本投手のように限界を超えて働くべきだという話ではありません。大切なのは、彼が「チームの一員として、勝利のために最善を尽くす」という明確な目的意識を持っていたことです。

働くとは、本来そうした「誰かのために」「何かを成し遂げるために」力を発揮することなのだと思います。

 

働きがい”を軸にした社会へ

私たちはこれまで、「報酬の大きい仕事ほど良い仕事」と考えがちでした。一方で、介護、保育、清掃、物流といったいわゆる“3K(きつい・汚い・危険)”の仕事は、賃金水準が低く、社会的評価もされにくい傾向があります。

しかし実際には、こうした方々が社会の土台を支え、私たちの生活を守ってくださっている尊い仕事なのです。

報酬の大小ではなく、「どれだけ多くの人を楽にしているか」という視点で労働を評価する時代に変えていく必要があります。

 

これからの時代に求められるのは、「働き方改革」から「働きがい改革」への転換です。
効率や生産性を高めることだけでなく、「自分の仕事が誰の幸せにつながっているのか」を実感できる環境を整えること。

経営者は、利益だけでなく、人の笑顔を成果として語るべきです。
従業員もまた、自分の仕事が誰かの生活を支えていることに誇りを持てるようにすることが重要です。

 

働き方改革が「働く時間を減らすための改革」だったとすれば、働きがい改革は「働く意味を取り戻すための改革」です。

高市さんの覚悟と山本投手の献身に共通するのは、「誰かのために働く」という姿勢です。

これこそが、日本が世界に示すべき新しい働く哲学ではないでしょうか。

多根幹雄
執筆者
多根幹雄
株式会社パリミキホールディングス
代表取締役会長
スイス、ジュネーブに1999年から9年間駐在し、グループ企業の資金運用を担当してきました。その間、多くのブライベートバンクやファミリーオフィスからの情報により、世界18カ国100を超えるファンドマネージャーを訪問。実際投資を行う中で、良いファンドを見極める選択眼を磨くことが出来ました。また当時築いたスイスでのネットワークが現在の運用に大いに役立っています。また、大手のメガネ専門店チェーンの役員として実際の企業の盛衰も経験し、どんな時に組織が良くなり、また悪くなるかを身をもって体験しました。そこから、どんな企業やファンドにも旬や寿命があるというのが持論です。その為、常に新しいファンドを発掘し、旬のファンドに入れ替えを行うことで、長期で高いパフォーマンスを目指しています。

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