激動の選挙シーズンが日米で終わりを迎えました。日本では与党の過半数割れ、米国ではトランプ氏の勝利と、両国とも政治の大きな転換点となる結果が示されました。この政治変動は、両国の将来にどのような影響をもたらすのでしょうか。
日本の衆院選挙で最も注目すべきは、議席を4倍に増やした国民民主党がキャスティングボートを握ることになった点です。一見すると政局の不安定要因と捉えられがちですが、実は日本経済にとって思わぬ好機となる可能性を秘めています。
なぜでしょうか。過去30年の日本経済低迷の根本的な要因の一つは、経済環境に逆行する政策の連続でした。バブル崩壊後、民間部門では土地や株式などの資産価値が急落する一方で、借金は残ったままという苦しい状況に陥りました。この時期に必要だったのは、政府が積極的に需要を創出し、信用収縮の悪循環を断ち切ることでした。
しかし、実際に取られた政策は真逆のものでした。1997年の消費税増税を皮切りに、政府は財政再建を最優先。さらに小泉政権期には、本来インフレ下で有効な規制改革をデフレ下で断行するという、状況にそぐわない政策が推し進められました。その後のアベノミクスでいったん息を吹き返した経済も、二度の消費税増税でその効果が相殺されてしまいました。
そして今、日本はようやくデフレ不況からの脱却の機会を迎えています。米中対立やウクライナ情勢を背景とした世界的なインフレ、円安の進行、さらには団塊世代の労働市場からの退出による人手不足など、様々な要因が重なって賃金上昇の環境が整いつつあります。
この絶好のタイミングで、国民民主党は「手取りを増やす」という明確な政策を掲げています。特に注目すべきは、「103万円の壁」を178万円に引き上げる提案です。これが実現すれば、時給アップや、不正規労働者の正社員化が推進し、年収の継続的な上昇が国内経済の活性化をもたらすことになるでしょう。そして財政再建にも道筋をつけることになるのです。
このように増税派の自民党の石破氏と立憲民主党の野田氏をリーダーとする両党が過半数に届かない今回の選挙結果は、このチャンスを活かせる絶好の政治環境を作り出したと言えるでしょう。
一方、米国の大統領選では、日米のマスコミの予想を大きく覆してトランプ氏が圧勝しました。特筆すべきは、選挙期間中から結果確定に至るまでの既存メディアの報道姿勢です。アメリカはもちろん日本の主要メディアの多くは、明らかな趨勢にもかかわらず、トランプ氏の優勢を認めることに極めて慎重でした。
この現象は、米国の政治構造の本質を如実に表しています。政治献金に制限のない米国では、軍需産業を筆頭に・金融・製薬・エネルギー・食品などの大企業群が、潤沢な資金力を通じて政治とメディアの両方に強い影響力を持ってきました。その結果、表面的には二大政党制による民主主義を標榜しながら、実質的には国や国民の利益よりも企業群の利益を優先した政策決定が横行するという構図が定着していたのです。
しかし、この構造に大きな変化をもたらす存在として、トランプ氏とイーロン・マスク氏という二人が台頭してきました。特にマスク氏は、ツイッター(現X)の買収を通じて、既存のメディア支配構造に真っ向から挑戦。情報発信の新たなプラットフォームを確立しつつあります。
今回のトランプ陣営には、優秀なスタッフを確保できず政権運営に苦労した前回とは異なり、イーロン・マスク氏をはじめとする優れたスタッフチームを編成できそうです。これにより、政権運営の実務面でも、より実効性の高い体制が期待できます。
特に期待されるのは、国際関係の改善です。バイデン政権下で深刻化したウクライナ紛争やガザ地区の問題など、国際的な緊張緩和に向けた具体的な動きが出てくる可能性が高まっています。
両国の選挙結果は、これまでの政治・経済の仕組みが大きく変わる可能性を示唆しています。波乱はあるものの、ようやく硬直した現状を打破できるチャンスが広がる可能性があります。今後の展開に期待したいですね。
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