世界的なパラダイムシフトとトランプ政権の再登場

2025年05月13日

最近はトランプ大統領のニュースを聞かない日は無いくらい、大きく世界が揺れています。実際、彼が何を考え、どう対応すべきかという議論が巷をにぎわしていますね。

確かに彼独特のキャラクターによって、大きな影響が出ているのも事実ですが、大事なことは、トランプが世界を変えているのではなくて、世界が、そしてアメリカが変わったからトランプのような人間が大統領に選ばれたと考えるべきでしょう。

真に重要なのは、彼のような指導者が台頭した経済的・地政学的背景に目を向けることです。

 

揺らぐアメリカの覇権システム

米国は現在でも世界の軍事支出の実に37%を占めるなど、圧倒的な軍事大国として長年君臨してきました。この軍事力を背景に、エネルギーの決済をドルに限定する「ペトロダラー体制」を維持し、ドルの基軸通貨としての地位を確保してきた点は看過できません。しかし、この体制は今日、かつてない構造的危機に直面しています。

 

最も深刻な問題は、米国の国家債務の膨張です。

米国債務の「金利」支払いだけで、なんとアメリカのこの巨大な軍事予算に匹敵する規模に達してしまっているのです。

基軸通貨国としての「法外な特権」を享受してきた米国ですが、この債務規模は通貨の信用リスクを高め、ドルの基軸通貨としての地位そのものを脅かしつつあります。近年の金やデジタル通貨の大幅な上昇も、ドルに対する不信感と、かといってその他の国が発行する通貨も、信任に値しないという評価の表れだと思います。
軍事費の大幅な削減も選択肢として存在しますが、それはドル体制の根幹を揺るがし、結果的に膨大な海外からの債務に依存している米国経済モデルの崩壊を招きかねません。この構造的ジレンマは、トランプ政権の4年間だけでなく、今後どの政権が誕生しても回避できない歴史的課題となっているのです。

 

トランプ政権の一連の行為は、ある意味徳川幕府による大政奉還のようにも見えます。徳川が大政奉還した最大の理由の一つが財政難でした。覇権を維持する体力が無くなり、それを返納することで、自らの体力を強化して延命を図ろうとしたのです。

 

グローバリゼーションの限界

冷戦終結後、東西の障壁が取り払われ、インターネットなどの情報技術革命と相まって加速したグローバリゼーションは、確かに中国などの新興国に繁栄をもたらしたように見えます。

しかし、その最大の受益者は欧米のグローバル企業とその大株主層でした。

発展途上国での低い生産コストと、先進国における高い販売価格という大きなギャップから生まれる膨大な利益が、米国内および世界的な富の偏在を加速させ、貧富の差を極限に近い状態まで拡大してきたのです。

 

また、グローバリゼーションは、皮肉にも生産能力の海外流出により、欧米諸国の相対的経済力や技術力を低下させることとなり、先進各国における所得格差の急激な拡大と共に、その継続を困難にしてきています。このグローバリゼーションを主導してきたのが「西側資本主義エリート」ですが、その象徴たる世界経済フォーラム(ダボス会議)を永年率いてきたクラウス・シュワブ会長の退任は、この時代の終焉を表す出来事とも思えます。

 

構造変化がもたらす投資機会

トランプ政権誕生の背景には、欧米の経済力の相対的衰退、そして従来型グローバリゼーションの持続が難しくなっている環境があります。これらの構造的変化を直視し、今後の世界経済の展開を予測することが重要です。

このパラダイムシフトは脅威でもありますが、同時にしっかり見定めることが出来れば、大きな投資機会をもたらすでしょう。従来の経済秩序からの転換期には、常に新たな富の創出のチャンスが生まれるものです。

賢明な投資家は、この構造変化を恐れるのではなく、戦略的機会として捉えるべきでしょう。

多根幹雄
執筆者
多根幹雄
株式会社パリミキホールディングス
代表取締役会長
スイス、ジュネーブに1999年から9年間駐在し、グループ企業の資金運用を担当してきました。その間、多くのブライベートバンクやファミリーオフィスからの情報により、世界18カ国100を超えるファンドマネージャーを訪問。実際投資を行う中で、良いファンドを見極める選択眼を磨くことが出来ました。また当時築いたスイスでのネットワークが現在の運用に大いに役立っています。また、大手のメガネ専門店チェーンの役員として実際の企業の盛衰も経験し、どんな時に組織が良くなり、また悪くなるかを身をもって体験しました。そこから、どんな企業やファンドにも旬や寿命があるというのが持論です。その為、常に新しいファンドを発掘し、旬のファンドに入れ替えを行うことで、長期で高いパフォーマンスを目指しています。

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